DCF(NPV、IRR)法で投資判断をする(1/2)

今回はケーススタディです。下記のような事例を基にエクセルを使って投資をするかどうかの分析をしてみましょう。

A社は創業10年の中堅消費財メーカーである。主力商品である「オレンジシャンプー・コンディショナー」がヒットし、昨年度の売上高は50億円まで伸び、取引先の販売店とのネットワークも拡大してきた。

好調な業績を追い風にして社長はビジネスをさらに大きくしたいと考えており、新商品の「レモンシャンプー・コンディショナー」を導入したいと考えている。取引先および一般消費者にこの新商品のコンセプトについて相談をしたところ、非常に評判が良く、将来的にはオレンジシャンプーと同等レベルの売上に成長できると期待している。

「レモンシャンプー・コンディショナー」を正式に立ち上げるべきかどうか、まずはマーケティング部が中心になって事業計画を作成してきた。これによると独自の製造工程を用いるために新たに導入する機械に5億円の投資が必要となるが、後は既存の資産をそのまま使えるらしい。販売売上高の数字も、不確定要素はあるものの、いわゆる「妥当」なレベルと考えている。経理部からもらった運転資金の情報も手元に集まったので、DCF法に基づいて、このプロジェクトを行うべきかどうかを判断したい。

マーケティング部および経理部から集めたデータは下記のとおりとなっています。こちら(dcf_1.xlsx 直)をクリックするとエクセル形式でダウンロードできます。


STEP.1・・・まずはベースシナリオを作成してみる。

マーケティング部が持ってきた事業計画自体にツッコミどころは満載ですが、まずはその前にベースシナリオとして作成をしてみましょう。所与の情報を使いながらひとつのエコノミクスに仕上げていきます。ここでのコツは、なるべくインプット項目は少なくすること。後でシミュレーションをかける際にインプットが多いと分析自体が混乱してしまうので、シンプルなモデルにすることを心がけます。

投資をするかどうかをDCF法で判断するためには、まずフリーキャッシュフローを計算する必要があります。フリーキャッシュフローの計算方法は

税引き後営業利益−⊿運転資金(WC)+減価償却−投資

になりますので所与の情報から入れ込んでいけばいいです。⊿運転資金を出すためには、いったん運転資金(売掛金、買掛金、棚卸資産)の期末残高を計算し、前期末とのギャップを計算するというひと手間を加えています。

また注意すべき点として「清算価値」を計上することが挙げられます。7年後プロジェクトが終了したとしても、売掛金は回収する必要があるし、買掛金は支払って清算する必要がある。棚卸資産は(議論の余地はあるけれども)現金化させる、ということを行うので、プロジェクトが終了する際はキャッシュが戻ってくる、という状態をエコノミクスの中に反映させましょう。

このようにしてフリーキャッシュフローが算出されれば、あとはディスカウントファクターを合わせて現在価値に直してあげればNPVが出ます。IRRは、IRR関数でフリーキャッシュフローを囲ってあげれば算出されますね。

私のほうで作業実践したのがこちらの動画になります。自信や時間がない方、一度自分で作り上げた方で他の人のやり方を参照したい方はどうぞ。

続きはこちら→【DCF(NPV、IRR)法で投資判断をする(2/2)】